++ その他の本 ++



NO.12  『誰も知らない名言集』  リリー・フランキー 著

 この本は著者であるリリー・フランキーがその特異な人間関係を駆使して集められた日常に溢れる名言を集め、そのストーリーを綴ったものである。ゼミの企画の得点として加えることが、あるいは読書のページに書き加えることに多少の疑問を感じる一冊ではある。だが、夜中の3時、寝る前の布団の中でこれほど私を爆笑させた本は今までなかった。私にとってそれほど偉大な一冊であるため、感想の筆を執るに至った。リリー・フランキーの交友関係、そして人間観察の力は類まれな才能と言わざるを得ない。この域に達すると、人生がテーマパークである。常人には気付かない些細なことがきっかけとなり、その場はアトラクションとなる。感動と興奮の連続。基本的に公序良俗に反する可能性があるため、ここで紹介できないのが残念でならない。リリー・フランキーワールド悪感、いや圧巻である。

 

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NO.11  『サッカー監督という仕事』  湯浅 健二 著

 この本では著者が書いているように「自由にプレーせざるを得ないサッカーの基本的メカニズムと、その限りない魅力を広く知ってもらいたい」という思いを存分に感じることができた。ご存知の通り、サッカーは形式、ルール共にシンプルそのものであり、イレギュラーしやすい球形のボールを足で扱うからそこ不確実なファクターが絶えず存在し、最終的には選手が自由に判断と決断をし、プレーせざるを得ない。そんな中、サッカー監督はどのような存在であるべきか、どういう仕事が望ましいのか、それについて監督のパーソナリティに焦点を当てて本書は書かれている。

 読み終えて、世に言う素晴しい名監督達の人間としての器の大きさに感動した。かなり抽象的ではあるが、名監督と呼ばれる人たちは「この人についてゆけば何かが起こるかもしれない」と選手に思わせるような人間的魅力を備えているらしい。とにかくサッカー監督の偉大さを知る意味ではとても良い本だと思う。サッカーを知らない人でも、組織の上部に立つ人にはおすすめである。

 

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NO.10  『羊をめぐる冒険(下)』  村上 春樹 著

 上巻の終わりに巻き込まれた事件のために、僕は星形の斑紋を背中に持っているという一頭の羊をめぐる冒険を始めることになる。冒険が進むにつれて次々と明らかになってゆく事実、日常では有り得ない状況設定という村上春樹の世界観にわたくしは徐々に引き込まれてしまった。その辺はさすがである。しかしながら、正直なところ『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』に比べるとやや物足りなかった気がする。『羊をめぐる冒険』は登場する人物や状況設定は確かに面白いのだが、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の様にいろいろと考えさせられる部分が少なかったように思う。もしかしたら、感じるべきところはあったのかもしれないが、少なくともわたくしはそれを感じる事ができなかったため物足りなく思ってしまった。こうなってくると、村上春樹の作品は前者と後者のどちらの方が多いのか気になってくる。さて、次は何を読むか、検証は続く。

 

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NO.9  『羊をめぐる冒険(上)』  村上 春樹 著

 『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を読んでから、わたくしは村上春樹の作品の面白さを知り、立て続けに手元にあった本作品『羊をめぐる冒険』を読み始めた。予想していた通り『世界の終わりとワードボイルド・ワンダーランド』同様『羊をめぐる冒険』も展開が読み辛い内容から始まる。ちょうど行定勲監督の映画『ひまわり』に似た冒頭だった。そしてまた、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』でわたくしのお気に入りだった少々人生を投げやり気味に生きる僕(主人公)に似通ったまたしても僕(主人公)が登場する。彼(僕)は自らの身に起こることを非常に合理的に解釈し、ほとんど無抵抗に受け入れるのだが、見ていてとても気持ちが良い。わたくしもあのような思考回路を持つことができたらどれだけゆるりとした生活を送れるだろうかとついつい想像してしまう。

 さて内容はというと、上巻ではほぼ8割が既述の僕が繰り広げる村上春樹の描く世界で埋め尽くされている。しかし終盤、僕は可笑しな事件に巻き込まれる事になる。そこから羊をめぐる冒険は始まる。

 

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NO.8  『ベンゲル・ノート』  中西 哲生 戸塚 啓 著

 アーセン・ベンゲル、彼は94年から95年の約1年半の間、名古屋グランパスで監督を務め、現在イングランドプレミアリーグのアーセナルの監督として活躍する世界有数の名監督の一人である。また、ベンゲル・ノートは彼がグランパスの監督だった当時選手であった中西哲生のベンゲルの練習内容、言動などのメモを本にまとめたものである。今回はこの本の中で最も印象に言葉を紹介したいと思う。

 “ Pass should be future, not past, not present. “

 この言葉はベンゲルのサッカーに対する前向きな姿勢が伝わってくる。直訳すれば「パスは過去でもなく、現在でもなく、未来に出すものだ」である。つまり、「パスは未来を切り開くものだから、常に前に意識を持って、そしてゴールを狙っていけ」ということなのだろう。他にも多くの名言を残しているベンゲル、重要なことをシンプルかつ的確にまとめあげる能力が名監督という彼の地位を不動のものにしているのかもしれない。

 

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NO.7  『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(下)』  村上 春樹 著

 「世界の終わり」と「ハードボイルド・ワンダーランド」それぞれの関係が謎であった上巻とは対照的に、下巻では冒頭にその2つの世界の関係が暴露されることになる。と同時に、不可解であった今までの話に繋がりが見えてくる。2つの小説が同時並行で書かれている理由がはっきりとわかった瞬間だった。私はその関係が明かされる時の首尾一貫した論理性と私とは次元の異なる発想力に驚いてしまった。しかも、それが突拍子の無い現実離れした空想の世界ではなく、現実の世界でも考えられ得る人間の思考回路を比喩的に描き出しているのだ。きっと村上春樹の頭の中には人間の脳の縮図が存在し、その比喩表現が小説なのではないだろうかと感じた。

 私にとって村上春樹、そして小説の面白さを体感することができたという意味でこの作品の存在価値は大きい。今後私の推薦書の中の1冊に加えたいと思う。

 

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NO.6  『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)』  村上 春樹 著

 私は村上春樹の小説が好きではなかった。そもそも小説そのものが好きではなかったし、中でも村上春樹の作品は小説を読み慣れない私にとっては数十ページで頭を混乱させてくる難敵であったため毛嫌いしていた。しかし最近、2人の先輩の愛読書に本書「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」が挙げられていたので読んでみることにした。

 最初は「世界の終わり」と「ハードボイルド・ワンダーランド」がなぜ同時並行で書かれているかの繋がりがわからず、やはり混乱してしまった。特に「世界の終わり」は不自然な規定によって統制された不思議な世界観が描かれているため、この世界が何のために描かれどのような展開になるのかが全くと言って良いほどわからなかった。しかし、次第にではあるが、「世界の終わり」と「ハードボイルド・ワンダーランド」それぞれの話がわかってくるようになり、両者の繋がりがおぼろげながらわかりそうになってくるところで上巻が終わる。

 ここまで読んで思うことは1つ、なぜ今まで彼の作品を読まなかったのかと言う事である。以前、彼の作品を読んだ時にもう少し我慢して読み続けていたら、とそう思う。より面白くなるであろう下巻を早く読みたい。

 

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NO.5  『ワールドカップの世界地図』  大住良之 著

 2002年には日韓ワールドカップが開催されサッカーが日本中の注目を集めた。そして来年にはドイツワールドカップが控えている。日本代表はアジア予選を突破し出場の切符を手に入れた。ますますサッカー熱が過熱する中、本書はワールドカップをより楽しむためにサッカー初心者の方に薦めたい一冊である。

 私はよく調子が悪い時に有名なゴールシーンを見て気持ちを高めている。そのゴールシーンとは86年メキシコ大会アルゼンチン対イングランドのマラドーナの5人抜きである。理由はよくわからないが、あのシーンを見ると私はとにかく興奮してしまう。一回見ていただければわかると思うが、あのシーンにはワールドカップの醍醐味がつまっていると私は考えている。まさにスペクタクルという言葉がふさわしい。本書の中にもこのシーンを含め、数々のワールドカップ伝説が書かれている。世界中で十数億人が熱狂するワールドカップの雑学を学ぶには良い本であった。

 

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NO.4  『スポーツ生活圏構想』  電通総研スポーツ文化研究チーム+加藤久 著

 本著は右腕の参考文献として読んだものですが、意外とおもしろかったので感想を書きます。内容は「スポーツとは何か」から始まり、コミュニティを作る存在としてスポーツの意義などを説明しています。また様々なスポーツ関連の指標を使って都道府県のスポーツ豊かさ度をランキングして、さらにその結果を分析しています。

 中でも特に私の興味を引いたのが、ドイツのスポーツクラブの生立ちでした。本文をそのまま引用すると「スポーツ環境の整備に対する連邦(国)や州の基本的なスタンスも、お金は出すが干渉はしない、つまり、スポーツクラブの運営や活動の展開は、クラブメンバー、地域住民に委ねられ、行政はあくまで施設の整備など環境改善にその役割を自主規制している」らしいです。こんなことは日本では考えられないと私は思いました。日本では行政主導が慣例であり、地域住民が自主的にスポーツクラブを運営している姿は想像できません。また、政府もお金を出している以上干渉せずに我慢することはできないと思います。

 そのように考えると、日本には地域総合型スポーツクラブは根付きにくいのではないでしょうか。少なくとも日本は、ドイツ社会のように都市国家の形態が集合し大きな単位の国家を形成しているわけではないので、ドイツと同じ論理の自治意識の高さは期待できません。スポーツクラブが根付く土壌がない日本ではヨーロッパとは違う独自の手法が必要になるはずです。しかし、残念ながら現在の政策ではそれを実感できません。これからは模倣する側ではなく模倣される側になっていかなければならないとスポーツの分野でも感じてしまいました。

++ おまけ
スポーツ豊かさ度ランキングの順位
1位 山梨県  2位 長野県  3位 鳥取県
45位 大阪府 46位 福岡県 47位 青森県
詳しくは本著p.52-145参照。

 

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NO.3  『バカにみえる日本語』  誤字等日本語研究会 著

 「こんばんわ」この言葉を見てどう思うだろうか。もちろん正しくは「こんばんは」であるが、最近では小学校の先生でも前者の表記が正しいと教える困り者がいるそうだ。

 本書ではひたすらこのような誤字や誤用を紹介し、それについて解説をしているのだが、その中で肝に銘じておきたいフレーズがあったのでここで紹介しようと思う。それは「どんなに論理的に書かれた論文であっても誤字や誤用が一つあっただけで信頼を失ってしまうものだ」というフレーズだ。確かに「危険はいろいろな場所に遍在している」などと書いたら、「奇跡的なミラクルですねぇ」と言っているミスターと大差がなく、たった一つの言葉で読者にバカだと思われてしまう。そうならないためにも言葉の使い方には細心の注意を払わなければならないと再認識した。

 これから様々な文章を書くことになる私にとって、この再認識は意味のあることだと思う。本書にも書かれているように、正しい日本語を身につける一番の近道は辞書を引く少しの手間を惜しまず、頻繁に辞書を引くことだそうだ。今まで犬猿の仲であった辞書と友好関係を築く時がきた、と心を改めてこれから努力していこうと思う。

 

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NO.2  『ブランド戦略シナリオ-コンテクスト・ブランディング-』  阿久津聡 石田茂 著

 私は期待されると結果を出せないタイプである。逆に期待されていないと反骨精神剥き出しで頑張り、予想以上の結果を出す。これは昔から一貫している私の性格だ。それ故、私は波のある性格と言えよう。その時、ふと本棚に目をやると懐かしい本を見つけた。

『ブランド戦略シナリオ-コンテクスト・ブランディング-』

 そして、おもしろいことを考えた。コンテクスト・ブランディングを応用して、私自身に「ものすごくできない子」というブランドイメージを創造し、常に伏兵的なポジションを確立しようと。そして再読を決意した。

 本書によると「企業が意図した形でメッセージを顧客に伝えるためには、その意味を規定するコンテクストに一貫性があることが重要だ」と書かれている。つまり、企業(私)は「小林真人はだめな子」というメッセージを正確に顧客(友人その他)にイメージさせるには一貫した論理性を持つコンテクスト(文脈)が必要なのだ。一貫したコンテクストとは、例えば「肌あれ」→「ビタミンC」→「アセロラ」→「アセロラドリンク」のような連想させる文脈のことだ。これを応用すると「だめな子」→「外にでない」→「パソコンばっかり」→「小林真人」とすることで企業のブランド・アイデンティティが顧客のブランド・イメージに接近する。さらにこのようなコンテクストを何重にも張り巡らすことで「小林真人=だめな子」というブランドが確立する。そうなれば私はより頑張り屋さんになれるはずである。

 雑文を書いてしまったが、相手に見えるように自分の正確なブランドを確立することは組織の中においてのポジションを見つける際に役に立つと思う。また、組織の運営の際にも組織のブランドを周囲に正確にイメージさせることは信頼のおける組織になるためには重要であると思われる。今後は「ブランド」に少し注意を払って行動して行きたい。


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NO.1  『ホリー・ガーデン』  江国 香織 著

 これは恋愛小説である。何を隠そう、本書は人に薦められて読んだ本である。

 はっきり言ってしまうと、今まで恋愛小説を読んだことがなかった。むしろ恋愛小説を読むのは時間の無駄とさえ思っていた。しかしながら読んでみると、私自身に無かったモノの見方や様々な人生が世の中にはあり得るということを知ることができた。思っていた以上に収穫は大きかったようだ。

 この小説は、過去の失恋を引きずり心から人を愛せずいくらかの男とカラダの関係だけを続ける女、その事を知りつつもその女を慕う男、さらに妻のいる男と付き合う女の話である。社会的な常識にのっとって考えれば、この三人の行動は理解し難いものであろう。しかしながら、非常識的なことを当たり前のように描写される三人の生活を読み進めるうち、次第にこのような生活・人生もあってもいいのかもしれないと思ってしまった。私の心の中に、三百頁の中に綴られる三人それぞれの価値観を受け入れる隙間があったのだろう。常識という固定観念の中では有り得ないと考えている事でも、その確固たる価値観を見せつけられると受け入れざるを得ないことがあるようだ。

 価値観とは多様である、多様すぎる。小説の中ではあるが現実にも十分あり得ることである故に、多くの考え方を受け入れる姿勢の必要性を感じさせられてしまった。今後も時間を見つけて読んでいこうと思う。


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( C ) M . K A l l r i g h t s r e s e r v e d .

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